【★★★】歩行ロボットの動き:ビースト機構

このロボットは、ロボットの機体中央のDCモータから出力される回転運動を歩行動作に変換して動きます。 今回ロボットの脚に採用した機構はビースト機構です。

ビースト機構はオランダの物理学者で芸術家のテオ・ヤンセンという人が考案しました。 この機構は4節リンクと呼ばれる基本的なリンク3つで構成されています。細かく分類すると、 2つのてこ-クランク機構と1つの平行クランク機構から構成されています。 次は4節リンクについて詳しく見ていきましょう。
このロボットは、ロボットの機体中央のDCモータから出力される回転運動を歩行動作に変換して動きます。 今回ロボットの脚に採用した機構はビースト機構です。
ビースト機構はオランダの物理学者で芸術家のテオ・ヤンセンという人が考案しました。 この機構は4節リンクと呼ばれる基本的なリンク3つで構成されています。細かく分類すると、 2つのてこ-クランク機構と1つの平行クランク機構から構成されています。 次は4節リンクについて詳しく見ていきましょう。
4節リンク機構とは、リンクと呼ばれる棒が4つ、環状につながる構造を持つ機構のことです。 見方を変えると、4節リンク機構は辺の長さだけが決まってそれぞれの頂点の角度が決まっていない四角形だと 考えることもできます。ロボットの機構を考えるうえで、この四角形のつくりが非常に大切です。 ではなぜ四角形のつくりが大切なのでしょうか。
上の3つの図形を見てください。赤色の辺を固定したうえで青色の辺を規則的に動かしてみます。 三角形はそもそもまったく動かせません。四角形は毎回必ず同じように動いていることがわかると思います。 五角形は毎回必ずしも同じように動くわけではないことが見てとれます。 このように、四角形は動き方が一通りなのでコントロールしやすく、機構の一部分によく使われています。
では、一般の機構について動き方が一通りかどうかはどのように考えるのでしょうか。
機構がどのくらい複雑に動けるのかを「自由度」と言います。数学の「次元」と似ています。
自由度とはいわば系の中の一次独立なベクトル、機械においてはアクチュエータの数です。
例えば普通の棒は上下方向、左右方向、回転方向の3自由度を持っています。その棒の1点を固定すると、
その点を中心とした回転運動しかできなくなるので、1自由度になります。
一般に平面運動の系の自由度Fの求め方は、
F=3×([リンクの数]-1)-[ジョイントが減らす自由度の合計]
で求められます。
回転を許容し1点で接合する方法をピン接合と呼び、ピン接合の各ジョイントは自由度を2ずつ減らします。
よってピン接合のみの系では四角形の時にF=1となり、確かに1自由度になっていることがわかります。
自由度に加え、もう一つ四節リンク機構において大切なことがあります。それは、各リンクの長さの関係です。 四節リンク機構を成立させるにあたって、4つのリンクが四角形を構成できることが必要条件になります。 例えば長さの比が1:1:1:4の四角形は存在しません。四角形の成立条件は 「最長辺の長さ≦他の辺の長さの和」なので、4つのリンクの長さをa≦b≦c≦dと表すとすると、 d≦a+b+cとなります。加えて、機械要素として使用するうえで重要な要素である「回転運動を入力できるか」 ということについて考えていきます。あるリンクが回転運動をするとき、四節リンク機構は図に示すような 4つの三角形を形成します。
この各リンクの長さをe,f,g,hと表すとすると、次の4つの三角不等式が成り立ちます。
g≦f-e+h,e+h≦f+g,e+f≦g+h,g≦h-e+f
2番目と3番目の不等式はいずれも変形するとe+g≦f+hとなります。
いま、4つのリンクのうち1つでも回転運動できる条件を考えているので、
不等式の制約が一番弱くなるようにeを最短リンクとしてよく、回転運動が入力できる条件は
「最短リンクの長さ+あるリンクの長さ≦他の2つのリンクの長さの和」となります。
この不等式は一番左辺が大きくなり右辺が小さくなる
「最短リンクの長さ+最長リンクの長さ≦他の2つのリンクの長さの和」という条件のみを確認すればよいことが
分かります。よって、四節リンクに回転運動が入力できる条件、すなわちあるリンクが回転できる条件は
「最短リンクの長さ+最長リンクの長さ≦他の2つのリンクの長さの和」
となります。
これを「グラスホフの定理」と呼び、この条件を満たす機構のことを「グラスホフ機構」と呼びます。
グラスホフの定理を満たす四節リンク機構は「てこ-クランク機構」「両てこ機構」「両クランク機構」の
3つに分類されます。3つの機構は同じ四節リンク機構のうちどのリンクを固定するかによって決まります。
次はこれら3つの機構について見ていきましょう。
てこ-クランク機構とは、揺動運動と回転運動を変換する機構です。 揺動運動をするリンク(図中の赤いリンク)のことを「てこ」、 回転運動をするリンクの外側に接合されているリンク(図中の青いリンク)を「クランク」と呼びます。
このてこ-クランク機構は四節リンク機構のうち最短リンクに隣り合う2つのリンクの一方を固定したときに 成立します。非常に身近な機構で、自転車を漕ぐときのペダルと人間のももの動きや自動車のワイパーの動きなどが 該当します。
この機構の面白いところはてこの往復で速度が違うことです。左側に戻っていく動きの方が速いため、 早戻り機構のひとつに数えられます。
両てこ機構とは、揺動運動を異なる揺動運動に変換する機構です。
この両てこ機構は四節リンク機構のうち最短リンクに向かい合うリンクを固定したときに成立します。 変換によって揺動運動の規則性が変化していることが見てとれます。
両クランク機構とは、回転運動を異なる回転運動に変換する機構です。
この両クランク機構は四節リンク機構のうち最短リンクを固定したときに成立します。 変換によって回転運動の規則性が変化していることが見てとれます。
平行クランク機構とは、リンクの動きを平行移動させるための機構です。 平行四辺形は押しつぶしたり引きのばしたりしても平行四辺形を保つ性質を利用しています。 リンク同士の長さの関係が特別なため、これまでの規則からは外れた動きになっているのが特徴的です。