Lab Data
名称:東京大学 サステナブル動力エネルギーシステム学分野
PI:山﨑由大(大学院新領域創成科学研究科 人間環境学専攻 教授)
所在地:本郷キャンパス工学部2号館 6階 62D2
HP:http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/energy/
YouTube:リンク(※五月祭で作成されたものではありません。)
名称:東京大学 サステナブル動力エネルギーシステム学分野
PI:山﨑由大(大学院新領域創成科学研究科 人間環境学専攻 教授)
所在地:本郷キャンパス工学部2号館 6階 62D2
HP:http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/energy/
YouTube:リンク(※五月祭で作成されたものではありません。)
自動車とそのエンジンには常に向き合うべき大きな社会課題がある。かつてそれは エンジンの効率向上・排ガス改善だったが、近年ではここに カーボンニュートラルが加わるようになった。
自動車によって様々な人が利便性を享受でき、あわせてカーボンニュートラルで持続性のある社会の実現を目指して、山﨑研究室では包括的な エネルギーシステムの最適化に挑戦している。
これまで自動車の パワートレイン(=エンジンで発生した回転エネルギーを効率よく駆動輪に伝えるため の装置類の総称)、特に エンジンの効率向上・排ガス改善に取り組んできました。また、分散型の エネルギーシステムの最適化にも取り組んできました。近年では、自動車の 電動化、 カーボンニュートラル社会の実現が社会の課題であり、自動車とエネルギーシステムの連携、最適化を大きな目標として研究に取り組んでいます。具体的には、カーボンニュートラルを目指して、再生可能エネルギーを使用して作られる合成燃料である e-fuelが注目を集めており、また自動車の電動化に伴い、自動車とエネルギーシステムで電気を融通することが必要となり、燃料と電気を媒介変数として両者を連携するためのモデル化や最適化の研究です。さらに、カーボンニュートラルを実現するうえでも、ドライバーや生活する人がその利便性を享受できるようなシステムとすることが必要と考えており、 人の特性なども考慮した最適化を目指しています。カーボンニュートラルといった 社会的な課題に直接的に貢献できるところにやりがいを感じています。
コロナの流行の初期、2020年は研究活動は持続していたものの、対面では研究室の閉鎖に近いような形で動いていました。これはどこの研究室でも同じだと思うんですが、その代わりにリモートでの打ち合わせを入れるようになりました。リモートの体制は場所や時間をあまり気にすることなくできるというのがメリットですが、デメリットとしては ちょっとした話がなかなかしづらくなりました。そういうのは結構大事で、以前はちょっと自分の手が空いた時にふらっと研究室の学生がいる部屋に寄って少し話すことで、研究に関わる部分に限らず、学生たちが持つ物事への考え方に触れる機会が多くありました。そういう話ができなかったのは残念でした。2020年の夏からは流行も一旦収まって、またコロナに関して未知だった部分もいくらか分かるようになってきて、そこからはリモートも使いつつあまり 普段と変わらない感じでできるようになりました。
この研究室でも対象にしているエンジンというのは機械工学で学ぶ4力学(材料力学、流体力学、熱力学、機械力学)に加えて、設計や生産、制御のどれが抜けても扱えないところがあって、 機械工学で学ぶ全部を使うという意味においては異なる分野を超越するような素地があると思っています。
機械工学の中だけではなく機械工学と何かみたいなところでいうと、エネルギーシステムは 電気系でやられているようなことだったんですけど、その電気を生み出しているのは機械という話になるんです。これまでも電気系の先生とも一緒に議論している時期があって、そのような連携がないと現在目指しているような研究は中々進められないというのがあると思います。 社会問題を取り扱うという話になるといろいろな要素が絡みあうので、異なる分野を超越しないと課題解決につながりません。
講義の形式に限らず、不安な日々を送った方、つらい思いをした方もいると思います。そのような中で、少し不謹慎な発言かもしれませんが、 100年に一回のことを今みんな経験している、と考えることも大事かと思います。さっきも言ったようにオンライン会議というのも良いところも悪いところもあると思います。他にも、移動に費やす時間が減ったのでその時間がほかに使えるようになったとか、全てが全てマイナスと思わずにやってくれればいいかなと思ってます 。そういったところから今までと違うっていうところに自分を置くことで 新たなアイディアとか出てくると思います。
修士課程2年の井田侑助さんに、山﨑研についてお話を伺いました。
非常にコミュニケーションを多くとる研究室です。週に一回、研究会という形でミーティングをおこなっていて、そこでは学年等の立場に関わらず、お互いに忌憚ない意見交換をして、研究に対する理解を深めています。研究会以外の場面でも日常的な話題を含めて気軽に話せるような雰囲気です。
エンジンにも100年以上の歴史があるのですが、 高温・高圧下で仕事をするエンジ ンのメカニズムは非常に複雑で、近年ソフトウェアの発達に伴い多く使用されるようになったシミュレーションやAIを用いても、 完全な解明には至らないのが現状です。そうした中で、自分の手で 実際のモノに触れるというのは研究における感覚を養う上でも非常に大切な機会です。当研究室ではエンジンが間近にある状態で日々勉強することでき、大変恵まれた環境で過ごせていると思います。
私の研究テーマは 自動車のエンジンと実際に運転する人の関係性を明らかにすることです。運転する人によってアクセルの踏み方って結構変わったりするんですけど、その運転の仕方を予測できると、エンジンの制御に使うことで効率のいい運転ができます。その手前の アクセルの踏み方の予測というのをその人ごとにしっかりできるようにする(ここで#多様性を認めた最適化 につながる!)ことを目標に、機械学習等を使いながらエンジンとドライバの関係性の解明を試みています。直近の予定としては、実験をしてデータを取り、そのデータを使って機械学習による解析を行います。
現代社会が抱える課題に対して自分の仕事がどう貢献できるかという考え方が、研究と高い親和性があって、業界選びにも生きたかなと感じています。私自身も研究活動を通して、エンジンが抱える課題に対して自分がこれまでに培ってきた知識や能力を活かして貢献したいと思うようになり、エンジニアの道を選びました。
研究室選びで私自身が非常に大切だと思うのが、その分野に対して少しでも興味を持っていることかと思います。勿論、知識が事前にあればそれに越したことはないかもしれませんが、もしなかったとしてもそれはいくらでも研究室に入ってから補えます。少しでも当研究室が扱う分野について興味をお持ちの方は、ぜひお越しください。
自動車の利便性をあらゆる形で享受するすべての人を組み入れた 全体制御最適化 をどう達成するのか。山﨑研究室は人類が向き合う社会課題の解決に挑み続けている。◆
取材日:2022年4月20日
インタビュー:小宮晨一
文責:浦鉄将
撮影・サポート:渡邊航太