#脳科学 #神経工学 #ニューロロボティクス

Lab Data

 名称:生命知能システム研究室
 PI:高橋宏知 (大学院情報理工学研究科 知能機械情報学専攻 准教授)
 所在地:本郷キャンパス工学部2号館 8階 81B
 HP:http://www.ne.t.u-tokyo.ac.jp/
 YouTube:リンク(※五月祭で作成されたものではありません。)

Movie

Prologue

 我々が機械を目の前にした時、その実体があって、その機能があって、そこから内部の構造を考えて理解しようとする。脳も同じように、その機能から最適解を考えることで、仕組みを解き明かせるのではないか。高橋研究室では、そんな 「機械のように脳を理解する」というユニークなアプローチで、脳に関わる研究を行っている。

 脳と機械には、相違点もある。脳の神経系では、外部からの刺激がなくても 自発活動を行っており、それは完全なノイズではなく、脳を形成するうえで必要な活動である。一方で、機械には、脳のような「自発活動」は存在しない。高橋研は、脳を機械と同じアプローチで理解するだけでなく、機械にはない脳の特徴に関する研究にも挑戦している。

研究室内には、細胞培養用のインキュベータや、顕微鏡などがならぶ。
研究用のラットも見せていただいた(右上)。

Interview with Prof. Takahashi

最近はどんなことに取り組まれているのですか。

 最近、面白いなと思って研究しているのは、 脳の自発活動についてです。脳って、刺激がなくても自発的に活動をしているんです。皆さんも、寝ているときも脳は死んでいなくて、活動していますよね。計算機の場合は1ビット狂っただけで機能しなくなるように、脳の自発活動のような「ゆらぎ」は存在しません。では、脳のそれは完全なノイズなのかというと、必ずしもそうではなくて、むしろ 必要不可欠なんです。例えば勉強をするときも、一度睡眠をとらないと記憶って定着しないですよね。だから、そのような脳の自発活動について解き明かしたいと考えています。

 もっとスケールの大きなことで言うと、僕ら人間っていろんな文化を作ってきましたよね。科学もそうだし、芸術も、宗教もそうです。そういった文化って、脳が作り出したものですよね。では、脳のどういう働きがこれらを作りだしたのか、解き明かしたいですよね。特に最近やっているのは、 ネズミに音楽を聴かせる研究です。僕たちは、音楽を聴くと体が勝手に動きますよね。そういうことがネズミでもあるのかと思って調べたところ、実際にあるんですね。そこで脳の活動をよく調べてみると、ネズミの脳の活動の特徴と、人間が作ってきた音楽の特徴のつじつまが合うんですね。少なくとも、ネズミからわれわれ人間が受け継いでいる脳の特徴があって、それがないと音楽のような文化はできないんじゃないかと。そういうことにロマンを感じながら研究をやっています。

「機械屋さんのやり方で脳を理解したい」と語る高橋准教授

機械系の研究室なので、デバイスなども開発しているのでしょうか。

 自分たちで実験に使う装置を開発したら、それは 自分たちにしかできない実験ができるわけですよね。例えば、シャーレの上で神経細胞を培養すると、(上述のように)自発活動が見られるんですね。それを見ていると、やっぱりロボットとつなげたくなるわけです。そんなアイデアから、僕たちの研究室では、 「脳で動くロボット」を作っています。

「CMOS」という半導体上に、神経細胞を広げた特殊なチップ。これを用いてロボットを動かすと、どことなく生き物を感じさせる動きをする(詳しくは動画参照)。

研究体制については、コロナ禍の前後で変化したのでしょうか。

 打ち合わせとかは軒並みオンラインになりましたよね。でも、小グループの会議は結構オンラインのほうがいいこともあります。 一人一人と密にコミュニケーションが取れるので。あとは、僕たちは実験をしないといけないから、限られた時間の中で密にならないようにやっています。それも、時間に制限があるので逆にまじめにできたりするんですよね(笑)。

 一方で、今まで人間関係を築いてきた大学院生たちとはオンラインになっても問題なかったんだけど、新しく入った人はなかなか対面で会えなかったので、最初は苦労しました。良いこともあれば、しんどいこともあったなと思いますね。

今年の五月祭テーマ『汽祭域』に関連して、まさに高橋准教授が行っている研究のように、異なる分野を超越することの意義や可能性についてどうお考えですか。

 他の人と違う見方、違うやり方で研究するのが一番大切だと思います。僕はずっと脳の研究をやってきたけれど、周りからは「あの人は機械系なのになんで脳の研究をやっているんだ」みたいに見られていました。でも、だからこそオリジナリティを発揮できたと思うんですよね。

 昔のことを振り返ると、よく脳の研究を始めたなと自分でも思います。僕が学生の頃の従来の機械系というと、四力学があって、制御があって、設計・生産があって、というふうに教育内容が固定されていました。でも、僕が卒論に取り組もうと思っていた時期に、少しずつ潮目が変わってきた感じがあって。要するに、従来の機械系のように 重厚長大なものだけではなくて、もっと新しいことを始めようという機運が高まっていた時期だったと思います。例えば、今まで大型機械などを扱っていたのが、ナノテクノロジーとか、バイオテクノロジーをやろうという風に変わっていったと。僕のところでは、医学と工学の連携をやろうということになって、 卒論研究は医学部と一緒にやっていたんです。僕はそれが普通なんだと思って、指導教員も医学の専門家だと思っていたんですけど、その分野はど素人だということを後になって知りました(笑)。だけど、そういうのがすごくいい経験だったと思うし、実際やってみてとても楽しかったから、今があると思うんですね。

高橋先生は今年、新しい本を出されたそうですね。

 「生命知能と人工知能」という本を今年の1月に出版しました。我々の研究室のフィールドである 「生命知能」と、「人工知能」がどう違うのかを語りました。脳の仕組みについてもいろいろ書いてあります。

「生命知能と人工知能」を片手に、本について語る高橋准教授。

 そして、僕が最終章で言いたいことはこれです。

「優秀な若者こそ博士になれ!」

 ちょっとドラ〇ン桜のパクリなんですけど(笑)。大学の集大成として、教育の仕上げとして、 なぜ研究をするのか、それがなぜ大切なのかを書きました。ぜひ読んでください。

いま、学部1・2年生は対面とオンラインの”ハイブリッド”で学生生活を送っています。そんな1・2年生に向けてメッセージをお願いします。

 まず、対面になったら 友達をたくさん作ってほしいですね。僕も研究室に巣ごもりで、飛行機にも新幹線にも乗っていないような生活をしていて、やっぱりこの2年間全く友達ができなかったです。友達を作るっていうのは、学生のうちは特に重要です。誰が偉くなるかわかりませんから(笑)。対面に戻ってきた今、ぜひ、そういう 人とのつながりを大切にしてほしいなと思います。

 もう一つは、 人と違うことをやるのがいいと思います。アメリカの企業家であるピーター・ティールの言葉に、 自分が真と思っていて、他人が真と思っていないことをやりなさい」というのがあります。それってとても重要で、例えば人工知能ってすごいなと思うわけだけど、みんなすごいと思っているわけですよね。そうしたら、他の人と競争して勝つしかない。僕は、脳って面白いなと思って研究しているけど、脳が産業的に役に立つと思っている人はあまりいないですよね。そんなふうに、自分はとても面白いと思っているけど他の人がそうでもないなと思っていることを、ぜひ大切にして挑戦してほしいと思います。

 機械情報工学科は30年ほど前にできた学科なんだけど、 この学科の前身に、舶用機械工学科というのがありました。それが、ある時「これからは機械と情報が必要なんだ」ということで機械情報工学科が作られたんだけど、その頃は、情報なんて何それ、みたいな感じだったわけです。それが、30年たった時にこれだけみんな「情報やりたい、ロボットやりたい」って言ってるって、すごいことですよね。そんな機械情報工学科に、ぜひ来てほしいと思います。

高橋先生、ありがとうございました!

Voices of students

修士課程1年の大島果林さんに、高橋研についてお話を伺いました。

研究室の特徴や雰囲気はどんな感じですか。

 この研究室ではラットなどを扱っているので、他の研究室と比べると、情報系だけではなくて生ものを対象としていて、 対面で集まって手を動かして実験する機会が多いのが特徴です。学生間では、実験室であった時に悩み事を気軽に相談したりとか、普段ミーティングで話さない小さな話題を話せるのは良いところだと思います。

「ラットが音楽で踊る」研究をされているそうですが。

 人間は、クラブハウスなどで音楽に乗って踊っていると仲良くなったり、一体感が生まれたりすると思うんですけど、同じようなことが別の動物でも起きるのではないかと。ラットでも、音楽を聴いたときに体を動かす現象があったので、 音楽に乗って踊ることで実際に仲良くなるのかを卒論で調べました。

ー仲良くなったんですか?

 ちょっとだけ仲良くなりました(笑)。

大島さんの研究室生活を大公開!

研究室生活における1日のスケジュール例

学生の将来の進路はどんな感じですか?

 情報系の研究室ではあるので、シミュレーションなどをやっているメンバーは、やっぱり エンジニアや開発系に進む人も多いです。あとは、実験という研究のプロセス自体がいろんな分野にも応用できることなので、情報系に限らず、 バイオ系やコンサルなどの企業に就職する人もいます。

この研究室に興味のある学生へメッセージ

 進学選択の時は、自分の興味や点数、就職のこととか、いろんな指標があって迷ってしまうと思うんですけど、私は 興味を優先して選んだ結果、多少不得意なことでも頑張れたと思います。もし進学先に悩んでいる方で、例えば情報系にも興味があるけれど、完全に情報だけではなくて、 「人間ってどんな仕組みなんだろう」とか、 「いろんな分野に興味があって行くところが定まらない」と考えている人は、 機械情報工学科がおすすめかなと思います。

大島さん、ありがとうございました!

Epilogue

 機械のように脳をとらえ、その機能から最適な設計解を考えることで脳の仕組みを明らかにする。高橋研究室は、そんな 機械系のアプローチによる脳科学に挑戦している。◆

取材日:2022年4月15日
インタビュー・文責:岡本優真
撮影・サポート:横井総太朗、ほか数名

メイン企画
 メカトロニクス演習展示  自主プロジェクト展示  スターリングエンジン展示  研究室インタビュー
機械工学プチ企画
 キカイワールド  Techno Diary  遊星歯車展示  電子工作教室  ロボットコントロール体験  ロボットプログラミング教室  ロボットモーション体験
東大機械 データベース
 研究室紹介一覧  授業紹介一覧
 公式YouTube  公式Twitter  公式Facebook
第95回五月祭 公式