#バーチャルリアリティ #ヒューマンコンピュータインタラクション #サイバネティックインターフェイス

Lab Data

 名称:システム工学研究室
 PI:鳴海 拓志 (東京大学大学院情報理工学研究科 知能機械情報学専攻 准教授)
 所在地:本郷キャンパス工学部2号館 8階 83D4
 HP:https://www.cyber.t.u-tokyo.ac.jp/ja/

Movie

Prologue

 近年、「メタバース」の掛け声と共にVR技術やAR技術などが大きな注目を集めています。そんな中、鳴海先生の所属なさっている研究室は早い時期からバーチャルリアリティ技術に注目をし、研究をなさっています。

 この研究室のテーマは、「機械により拡張される人間」です。例えば、バーチャルリアリティ技術を使えば家にいながら、本来はありえないような空想の世界に没入することができます。これは、人間の視覚を拡張していると言えるでしょう。それだけではなく、触覚・嗅覚・味覚・満腹感などの五感を拡張していく研究もなさっています。このように人間とコンピュータが合わさることでより賢いシステムを作ることを目標としています。

研究室内には沢山のVR機器がおいてあります
研究室見学ではVR体験をさせて頂きました

Interview with Prof. Narumi

先生は何を研究なさっているのでしょうか

 バーチャルリアリティや、CSCW (Computer Supported Cooperative Work) と呼ばれるコミュニケーションを豊かにする技術の研究をしています。目標は、「人間とコンピュータが協力をすることでより賢いシステムを生む」ことにあります。AI (Artificial Intelligence)はコンピュータ単体で賢いシステムを作る分野ですが、それに似た概念として Human Augmentation (人間拡張) や Intelligence Amplification (知能増幅) といった考え方があります。 コンピュータが人間の脳と一緒になったら、人間はもっと賢く考えられたり能力を伸ばしたりすることができるのではないかということを狙った研究をしています。そのためのツールとしてバーチャルリアリティやZoomのようなコミュニケーションやテレプレゼンスの研究をしています。

「拡張する」というテーマについてお聞かせください

 全ての道具は「人間の能力を伸ばす」という意味で人間にとって拡張という形を取っていると言えます。例えば、火を使って人が賢くなるであったり、刃物を使って人は賢くなったり、服を着たりと、人間は道具を使うことで知能が増幅してきたという経緯があります。一方で、今はインターネットによって人間が使われていることもありますよね。この機械と人間との関係を使って、機械の可能性を伸ばすのではなく人間の可能性を伸ばさなければならないと考えています。人間のあり方や人間の能力の拡張、もっと言えば社会で幸せに生きける居場所を増やす、という意味で拡張があるのかと思っています。

「拡張」をして行った先にどのような未来を見据えていますか?

 どのような未来を見据えているかは各自が決めれば良いと思っており、研究室としての未来像があるわけではありません。一方で、今のトレンドもそうですが、どうやったら 「自分で考えて」良い社会を作っていけるかが大切です。他人の思考を奪わずに自分で思考をして良い結果にたどり着けるか、冷静に議論ができるか、自分の眠っている能力を引き出しやすくなるかということを考えています。

 今までは、空間的・時間的な制約でできなかったことをどんどんできるようにして、沢山の選択肢の中で各自の好みに基づいて選択ができる世の中になってほしいと思います。その、社会の中での選択肢の可能性を増やしていくことが近年の研究室のテーマです。

最近取り組まれている中で注目していることはなんですか?

 バーチャルリアリティの研究はどうやったら現実とそっくりの世界を作れるかということに主眼が置かれていました。そのために、触覚や味覚などの五感をどのように再現するかということをずっとやっていました。最近はそうではなくて、せっかく現実でないのだからどうやって リアルでないことを利用して、生活を豊かにできるかということに着眼をしています。

 例えば、メタバースで授業を受けた方が成績が上がるであるとか、私が女性の身体を使うと、女子学生の気持ちをもっと親身に考えることができるであるとか、先生と生徒の壁をフラットにできたりなど、身体と心とのつながりに興味があります。幸いなことに、感覚の技術の研究をしてきたので、こういう感覚を与えるとこのように身体が変化するということがわかってきています。それを使ったら、心がどのように自由になるかという研究に注目をしています。

以前、鳴海先生のテーマの一つに「人間をハックする」ということがあると伺ったのですが、それについてお考えのことをお聞かせください

 私が研究をして面白いと思うのは、工学部にいながら人間の仕組みがわかるというところです。VRの研究は人間が現実をどのように感じているかということを理解して再現する研究だからです。そもそも人間がなぜリアルと感じるのか、なぜ「美味しい」と感じるのか、などの仕組みが研究によって分かります。それの理解が進むと、「これで人が気づかないのであればこれができる」などができます。

 仕組みがわかれば、それを弄って働きかけることができるようになります。そのように感覚を少し弄るだけで、辛い現実がハッピーになったり普段感じている不便が楽になるのではないかと思っていて、そういった意味で人間をハックするという表現ができるのかと思います。

色々な分野にまたがる研究をなさる時の心構えについてお聞かせください

 やっぱり、人間のこと調べる上でデバイスも作れなければいけないし、心理学のようなところも大切ですし、最近のメタバースのように社会に働きかけて長い時間使うとどのようなことが起きるかという社会学・文系的なアプローチを取らないといけなくなります。

 一方で一人の人間が全ての専門家である必要もなく、お互いが情報交換ができるような共通言語が有れば良いなと思っています。そういった意味で駒場の教養の授業は役に立ったと思っています。自分の興味に応じて授業をとっていても、後から繋がってくるんじゃないかと感じてます。

研究室の一テーマである「ゴーストエンジニアリング」は「攻殻機動隊」の影響を受けてらっしゃるかと思いますが、それを踏まえて想像力の源についてお話いただけますでしょうか

 自覚的に影響を受けているわけではありませんが、沢山触れているので無意識に影響は受けています。「ゴースト」という考え方も、士郎正宗さんの「ゴースト イン ザ シェル」が最初ではなくて、その前にギルバート・ライルの「ゴースト イン ザ マシーン」という話が端緒です。この中では、もし機械に心があると仮定したら、分解をしていって心がなくなる瞬間は定義できないので、心なんてものは我々の幻影 (=ゴースト) にすぎないという批判的な意味で使われていました。

 でも、その後に機械と心は関係があるのだという挑発的な議論を拾って作品を作ったり新しい考えを膨らませている人たちがいて、その全体の流れを踏まえてその先に石を置くと面白いという考えから「ゴースト」という言葉を使っています。ポップカルチャーの影響を我々はかなり受けていますけれど、そこからまた掘り下げていくとまた新しい発見があって、視点が変わるし、学際的な行動なのかな、と思っています。

今年の五月祭テーマ『汽祭域』に関連して、異なる分野を超越することの意義や可能性についてどうお考えですか

 面白いと思うのは、お祭りという場は「ハレ」で、日常は「ケ」の場であることだと思うんですけれど、「汽祭域」というテーマをきいたときにそれが混じり合うのではないかと思いました。どこまでが日常かお祭りか分からなくなるというテーマなのかなと思います。

 実は、 VRでそのようなことが起きていていると考えています。皆さんはVRと聞いたときにゲームなどの非日常のものを想像すると思います。しかし、近年では教育や現場などの「ケ」の場でVRは利用されています。また、VRChatやclusterといったVR SNSで仕事の疲れを違う姿になることで癒すことができる人がいて、ある種の祝祭的な空間になっています。日常と地続きなんだけれども、少し離れている空間ってなんなんだろうということは気になっていることです。VRは今まで実験室の中でしか利用されておらず、それを社会で日常的に長い時間利用したらどうなるんだろうという新しい応用が研究できるようになったことは最近のことです。日常が非日常になっていく、地続きになっていくようなSF的な社会が来たときに、社会に何が起こるのかということが研究テーマになっています。

新型コロナウイルスで研究体制は変化しましたか?

 ほとんどの活動がオンラインになりました。もちろん、ハードウェアを作っている人は来ないと作業できないですけれど、2/3くらいの人はオンラインでやっています。それで私は特に困っていないかなと思っています。また、研究対象が大きく変わったことも感じています。今まで実験室に来ないと実験ができなかったけれど、オンラインでしか実験ができないという中でできるVRの実験はなんだろうということを考えたときにVRChatやclusterなどで実験をしたら取れるデータも増えて、幅は広がったなと考えています。

 しかも、VRなどを当研究室では昔から研究をしていましたが、なかなか社会に浸透してきませんでした。でも、今社会の方がどっとこちらの方に来て、「メタバースを使いたい」「VRについて教えてくれ」という空気になっています。ほとんど教えられることもないのですが(笑)、でも遠隔講義で意外と役に立ったりとか、講義の中でこういった実験をしたら面白いとか、効果がありました。例えば、うち雨宮先生は自分の見た目を頭良さそうなおじいさん先生と強面の先生にしたとき、どちらの成績が上がるかなどの実験をなさっていました。

最後に、学部一二年生にメッセージをいただけたらと思います

 やっぱり、全部オンラインになると寂しいなと思ったと思います。友達もできないし、新しいことに触れる機会が少ないのではないかと思います。僕が今メタバースについて思っていることも同じで、自分がすでに顔や名前が知られていたり友達のような基盤がある人はその基盤を持って、最初からメタバースに友達がいるような状態だと思うんですけれど、基盤がない人がやるのは辛いんじゃないかと思います。

 一方でまっさらな状態で始められるということは一ついいことかもしれないし、そういった時代にあった友達の見つけ方や自分の見つけ方があると思います。 前の人が出来ていたことが出来なくなって辛いと思うのではなくて、新しいやり方を見つけるためにチャレンジをしようと、できるだけ思ってほしいなと思っています。 そういったことを支援するために我々もVRやデジタルの研究を進めたいなと思っています。また、新しい出会いをどうやって作るのかということも考えています。現在、zoomで遠隔で先生をお招きすることや、飛び込みで大学の先生とzoomで話したりすることがし易くなっていると思うので、新しい関係もあるのだということを見つけてもらえたら嬉しいと思っています。

Voices of students

修士課程2年の児玉大樹さんに、葛岡・雨宮・鳴海研についてお話を伺いました。

研究室の雰囲気はどんな感じですか

 うちの研究室はかなり自由で、ノリがいい人が多いです。

 自由というのは先生からの干渉が少ないということです。自分で計画を立て、積極的にミーティングにでて質問をしていかないといけません。逆に、やるべきことを決められていないといけないという人は、何も声を掛けられずに研究が進まなくなってしまいます。なので、自分で積極的にやりたいという人は肌にあっていると思います。

 ノリがいいというのは、VRをやっているというのもあって最先端の流行をすぐに取り入れるということです。さらに、それだけじゃなくて「ボルダリング」のような周りはやっていないけれど自分だけがやっているような趣味にノッて共有していくのような面もあって、自分でやりたいことを共有することができるような良い仲間が揃っています。

将来の進路について教えてください

 アカデミアに残るか、研究開発系に進むか悩んでいます。自分は知的好奇心が強くて、「人がこのように感じるのはなぜか」のように、「なぜ」というところが強い人間です。なので、それはアカデミアによっているのではないかと考えていますが、それをうまく開発の方に生かすこともできるので、どちらに進むか悩んでいますが結論としては企業に進むとしても研究開発系に行くか、アカデミアに残ろうかなと思っています。

児玉さんの一日の予定を大公開!

この研究室に興味のある学生へメッセージを頂けますか?

 僕自身はフェンシング部に入っていて、ガチでやっていました。僕としてはなんでも良いので何かを一つ深めてほしいなと思っています。なんでも深めようと思うと、「なぜこうなのだろう」と考える機会が増えます。それは研究においても相互に役立てることができます。そういうところは研究室で重視されているので、何か一つ深めてほしいなと思います。

Epilogue

 鳴海先生のお話の中で、今までの制約から社会を解放して、より自由に・沢山の選択肢の中から生きることを目指しているという姿勢が印象に残りました。学部生へのメッセージにもありましたが、新しいやり方や自分なりのやり方を模索する姿勢は、最先端のテクノロジーに対峙する研究に欠かせない姿勢なのかな、ということを感じたインタビューでした。

取材日:2022年4月13日
インタビュー・文責:横井総太朗
撮影・サポート:アネクワット・タナチャイ、古森心、吉川駿、宮道彩乃、岡本優真、福田光輝

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